性感染症について

性感染症とは、性行為を通じて人から人に感染を起こすさまざまな病気の総称です。
以前は「性病」と言いましたが、最近では「性感染症」、「STD(Sexually Transmitted Diseases)」、「STI(Sexually Transmitted Infections)」の呼称を使用することが多いです。
近年、性交渉や性行動の多様化などにより一般に広まっており、病気の種類も症状も多様化しています。

現在、日本では性感染症の患者数が増加傾向にあります。
一度の性行為でも感染のリスクがあるため、予防に避妊具の使用などの配慮はもちろんですが、感染が疑われる場合は早めに相談することが大切です。

このような症状は
ありませんか?

  • 外陰部の…かゆみや痛みがある、できものやしこりを感じる、水疱や潰瘍ができた
  • 排尿時に…かゆみや痛みがある
  • 下着に…分泌物が多い、出血が混じる、臭いがきになる

予防や治療は
パートナーとご一緒に

感染の有無に不安を感じる場合、パートナーと協力して性感染症の検査を受けることを検討することは大切です。
性感染症の早期発見と適切な治療は、感染拡大を防ぎ、自身および他の人への感染リスクを減少させるために重要です。
性感染症の予防と早期対応に努めましょう。

性感染症の種類

性器クラミジア感染症

排尿時の軽い痛みや尿道付近のかゆみ、外尿道口から透明な分泌物が出るといった症状が知られていますが、自覚症状が現れないこともあります。
潜伏期間は比較的長く、おおよそ1~3週間程度です。

特に女性の場合は、感染したまま無症状無治療の場合、気づいた頃には子宮や卵管にまで感染が及んでいることがあります。
重症化すると、子宮内膜や卵管、腹膜に炎症を起こし、不妊症や子宮外妊娠、流産・早産といったリスクが高まるため、注意が必要です。

検査としては、尿や分泌物を検査し、菌の検出を行い治療の必要性を判断します。

梅毒

梅毒トレポネーマという細菌が感染することで起こる感染症です。
性行為で粘膜や皮膚の小さな傷から感染します。
感染すると、性器や肛門、口にしこりができたり、全身に発疹(ほっしん)が現れたりしますが、一旦症状が消えるため治ったと間違われることがあり、発見が遅れる危険があります。

検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると数年から数十年の間に心臓や血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、重大な合併症を起こすことがあります。

いま、梅毒の報告が増えています!!

日本では梅毒の発生について報告制度がありますが、1967年以降、減少していた報告数が、2011年頃から報告数は再び増加傾向となり、2021年以降大きく増加しています。
男性は20歳代~50歳代、女性は20歳代で多くの患者が報告されています。

淋菌感染症

淋菌と呼ばれる細菌に感染することで引き起こされます。
男性は尿道に感染して尿道炎や精巣上体炎を引き起こします。
女性は膣内から子宮、卵管へと感染しやがて腹腔内へと感染が広がっていきます。
いずれも不妊のリスクとなりますのでしっかりと治療することが必要です。

性器ヘルペス

性行為により単純ヘルペスウィルスに感染することで発症します。
初めて感染した場合の潜伏期間は2~10日程度で、すでに感染しているウィルスが活性化する場合は、疲労やストレス、免疫力の低下などをきっかけとして症状が出現します。

男性の場合、性器ヘルペスの主な症状には、亀頭や陰茎に小さな赤い発疹や水疱が現れ、痛みが伴うことが一般的です。
女性の場合、膣の入り口や肛門周辺の痛み、水疱、発熱などの症状が現れることがあります。

性器ヘルペスの治療は、抗ウイルス薬の内服です。
軽度の場合には軟膏の使用もあります。
再発が頻繁に起こる場合には、再発を抑える治療もありますので、同じような症状を感じた場合は、改めてご来院ください。

また、ヘルペスウィルス感染症に伴う症状として、比較的稀ではありますがElsberg(エルスバーグ)症候群という排尿障害を認めることがあります。
これは神経障害による一過性の括約筋不全で、尿が出せなくなる尿閉や便秘などの症状が出現します。
自然治癒することが知られていますが、治癒までに数ヶ月かかることもありますので、この間はカテーテルなどを用いた排尿管理が必要となります。

尖圭コンジローマ

ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が原因となる疾患で、性器や肛門周辺にイボ(腫瘤)ができることが特徴です。
感染率が高く、若い世代で多く見られます。

主な特徴は、性器や肛門周辺に、鶏のとさかやカリフラワーのような形状の表面がでこぼことしたイボができることです。
痛みなどの自覚症状は乏しく、イボの数も1つのこともあれば複数できることもあります。

治療法としては、患部にウィルスの増殖を抑える塗り薬を使用することが一般的ですが、病変の数や大きさによって適切な治療法は異なりますので、受診時にご相談ください。

膣トリコモナス

トリコモナスという目に見えない小さな虫が性器に侵入し、炎症をおこす病気です。
古くから知られる女性に多い性感染症です。
性行為だけでなくタオルや下着などから感染することもあります。

性器カンジタ症

カンジダというカビの一種が原因となり、性器に炎症をおこす病気です。
もともと体内に存在することが多い菌ですが、風邪や疲れ、ストレスなどで免疫力が低下した場合や、抗菌薬(抗生剤)やステロイド剤などを服用した後に発症することが多いです。
痒みやおりものの自覚症状、炎症がみられた場合は治療します。